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見積の作り方①

食品メーカーの仕事

見積とは

 見積とは、自社商品をいくらで売るか問屋・スーパーへ提示するための書類です。営業にとって必須のものといって過言ではありません。基本的には、別記事でも述べたように私たちメーカーのお客さんは問屋になるので問屋へ見積を提示するだけですが、場合によってはスーパーへの見積も作成することがあります。

価格の決まり方

 見積を作る際に重要な要素として、「値入率利益率というものがあります。これは、商品を売った際に売価に対していくらの利益がでるかを表した率のことです。
 具体的には、スーパーが問屋から210円で買った物を300円で店頭で売った時に、スーパーの値入率は30%となります。つまりこの商品をスーパーが300円で売ると30%の利益が出るということです。
計算式としては、

値入率(%)=(売価ー原価)/売価×100
(利益率)

となり、今回だと(300ー210)/300×100=30%という考え方です。
これは、スーパーだけでなく、メーカー・問屋側でも考えることできます。メーカーが問屋へ商品をいくらで売るか、問屋がメーカーから買った商品をスーパーにいくらで卸すかといった際にも、メーカーの値入率・問屋の値入率というものを考えていく必要があります。

 このように「値入」というものがあるため、商品はメーカーが売る時と、消費者が手に取る時では大きく値段が変わっていきます。

 実際、上図のように原価90円の商品が各流通段階を経ていくうちに最終的に倍の180円で売られるようになります。(※もちろん、企業・商品などによって値入率は違うのでこれは一例に過ぎません。)

 私たちメーカーは見積を作る際、「自分の会社の利益(値入)は何パーセントにしようか」「問屋への値入は何パーセント必要か」「スーパーの値入は何パーセントに設定しようか」などを考えて価格を決めていく必要があります。ここで気を付けたいのが、問屋・スーパーの値入を低くすれば当然商品を安く消費者の元へ届けることは可能ですが、値入が低いと問屋もスーパーも、売っても儲からないため買ってくれないという事態に陥ります。そのため、基本的には問屋・スーパーの値入率はある程度過去の取引の中で決まっているのでそれに準ずるのが良いです。(グロサリー(調味料や乾物などの賞味期限が長いものが多い、レトルト食品や醤油など)だと問屋の値入率が10~15%、スーパーの値入率が25%~35%くらいが一般的ではあります)

条件とは

 見積を作る際に、もう一つわすれていけないことがあります。それは「条件」というものです。これは、「商品を希望納価格にするために後から問屋へ支払うお金」と覚えると理解しやすいです。
 どういうことかという、それを理解する前に「仕切価格」というものを知る必要があります。この条件・仕切価格の部分は私も一番理解が難しかったですが、概念を1つずつ紐解いていくことで最終的には分かっていくと思います。

仕切価格

 「仕切価格」とは「メーカーが商品に対して定めている(登録している)価格」です。よく聞く、「メーカー希望小売価格」「標準小売価格」とは違い、基本的に一般消費者が知ることはできず、メーカーと問屋の間のみで使われる価格となります。
 そしてここで重要なことは、メーカーから問屋へ商品を販売する際、商品は仕切価格でしか売ることができない、という点です。つまりメーカーはAという商品を仕切価格160円で登録していると、Aを問屋へ100円で販売したくても(スーパーで180円で売るために問屋へ100円で売らないと値入が取れないといった事情などにより)160円でしか売れないということになります。
 しかし、これでは商品は同じ価格でしか提案することができず、バイヤーの「あと20円安かったら買うのに…」といった要望に応えることができなくなってしまいます。それを解決するために登場するのが「条件」となります。

条件

 「条件」とは上記でも述べたように、「商品を希望納価格にするために後から問屋へ支払うお金」のことです。メーカーは商品を「仕切価格」でしか販売することができず、仕切160円の商品を問屋へ100円で卸したい時にその差額60円を条件で対応します。具体的に言うと、まずは一度問屋へ160円で販売し、条件という形で差額の60円を問屋へ返すことで、最終的に問屋は100円で商品を買ったことと同義になります。

 ただし、ここで注意したいことは、この条件というものは基本的に商品が問屋からスーパーから卸された時に発生するものであり、メーカーが問屋から仕切価格のお金をもらった後しばらくしてから条件のお金を払うといったようにタイムラグが発生します。

即引

また、もう一点、見積を作成する前に注意しないといけないことがあります。それは「即引」というものです。これは「問屋の手間賃を割り引く」といったイメージです。基本的に商品は問屋へ卸され、そこから各スーパーのセンターやバックヤードへ配送されます。その際、問屋はメーカーから来た商品を納品先ごとに分けたりする手間がかかります。(例えば、段ボール1つに商品が80個入っていたら、1つのスーパーにそのまま段ボールのまま納品すると持て余してしまうので、問屋がそれを20個ずつに分けて4つのスーパーへ納品するなどします。)
 その手間代としてメーカーは問屋へ商品を売った際に、仕切価格から「即引」として品代を割り引きます。この即引というのは、基本的に問屋によって「〇%」と決まっています。(よくあるのは8%です。)
 最初、仕切価格でしか問屋に売ることはできないと述べましたが、実際は仕切価格に対して即引を掛け、出た数値を仕切価格から引いた価格で問屋に売ることになります。(その後、条件が発生するので真の納品価格とは違いますが)
 具体的な例としては、即引8%の取引において仕切価格160円の商品を問屋へ売った時は、
160-(160×8%)=160-12.8=147.2円
という計算式により、メーカーは問屋へ147.2円で売ったことになります。そして問屋へ100円で売りたいのならば、ここから47.2円の条件を出し、最終的に100円で売ったということになります。

 以上が、見積を作る際に理解しないといけない「仕切価格」「条件」「即引」となります。
恐らく、最初は理解に苦しみますが見積を作っていく内に理解できると思います。

「仕切(価格)」…メーカーが商品に対して定めている価格、問屋には仕切価格で卸される
「条件」…商品を問屋の希望価格にするために後から問屋へ支払うお金
「即引」…問屋の手間賃、〇%と決まっている


それでは、次の記事より実際の見積の作成手順を説明していきます。

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