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見積の作り方②

食品メーカーの仕事

実際の見積例

コピー○○様お見積り20220328

 上図が実際の見積書の例となります。これは一つの例なので、スーパー・問屋によって形式が決まっている所も多いためそこに合わせて記入していく必要があります。しかし、形式は違えど基本(仕切、条件、即引など)は同じなので見積を1枚書けるようになるとどの見積にも対応することができます。

各項目説明

 では、ここから見積の各項目の解説をしていきます。

①相手先

 この見積を提示する相手先を記入します。この見積はスーパー○○○○用のものですが、別記事でも説明したように、メーカーにとってのお客さんはあくまでも問屋なので、ここは問屋名・問屋の担当者名を記入するようにしましょう。(この見積をもとに、問屋はその問屋の形式でスーパーへ見積を提示します)
 ちなみに、会社などの組織や団体には「御中」をつけるのが社会人のマナーです。(○○株式会社様はダメです。)また人名の所には、「その人の苗字+様」でも構いませんが、丁寧に書く場合は「営業部 ○○次長殿」のように相手の所属、役職があるのなら役職+殿と記すと良いです。(細かい所にはなりますが「次長様」は言い回しとして正しくはありません)

②配送ロット、納品場所、有効期限

 この部分は企業によって項目が違ったり、そもそも書かない場合もありますが(見積に記入しなくても既に分かっている場合もあるので)、今回は1つのフォーマットとして認識してください。
 

 配送ロット…注文できる(配送可能な)最小単位のことです。例えば、配送ロット5甲(甲については⑨荷姿にて後述。今回は1甲=商品40個分)にしている場合は、1回の注文で5甲以上はまとめてくれないと配送しませんということです。どういうことかというと、基本的に、商品を問屋の倉庫まで運ぶのはメーカーの仕事で運賃もメーカー負担となります。そのため、ある程度注文をまとめてくれないと運賃だけでメーカーが赤字になる場合があるので、配送ロットを決めています。

 納品場所…説明するまでもなく、商品を納品する場所です。問屋の倉庫が一般的ですが、場合によってはスーパーのセンターなど問屋の先のお客さんの所へ直接運ぶ=直送の場合もあります。

 有効期限…この見積の有効期限です。期間限定の特価品として売り出す時は、有効期限を設定することでその期間までは特別にこの値段で売りますよ、というのを示すことができます。特に期限など無いというときは、「次回見積もり提出まで」という風にしておけば良いでしょう。(値上げなどがあった時に新しく見積を提示すれば、それまでの見積は効力をなくすといった流れになります。)

③件名

 この見積はどこのお客さん用かというのを記入すれば良いです。スーパーの名前を記入しておけば、問屋はこのスーパーへ売る時の見積なのだと分かります。

④日付

 見積を作った日付を書きます。それにより自分も相手もいつの見積か分かりやすくなり、同じ商品の見積を何回も提出した際でも最新のものを見つけやすいです。

⑤メーカー情報

 この見積をつくったメーカー・担当者名・連絡先情報を記入します。これによりお客さんも見積について質問がある時、誰に問い合わせたら良いか分かりやすくなります。

⑥JANコード

 商品のバーコードのすぐ下に付いている13桁の数字のことです。これにより、メーカー・問屋・スーパーは商品を識別することが多いです。実際、スーパーのレジはJANコード(バーコード)を読み取ることで、何の商品が何個売れた、と記録することができ、売上管理・在庫管理を簡単にすることができます。

⑦商品名

 商品名が入ります。

⑧容量

 商品1個の内容量を書きます。150gのパスタソースの場合は「150g」、薄めて使うタイプの鍋つゆ40gの小袋が3つセットの商品だと「40g×3」という風に書くと問屋・バイヤーも内容量をイメージしやすいです。また、飲み物だと単位は「ml」など商品によって書き方は変わってきます。

⑨荷姿

 荷物が運送される時の外観の状態のことです。例えば、荷姿が10×4だと、商品が10個入った段ボールがバンドで4つ合わさったものが、メーカーから問屋の倉庫へ納められるということです。
 商品によっては、段ボールではなくプラスチックケースに入ったものなどもありますが、基本的には段ボールが多いです。

 そしてこの荷姿が、1甲に当たります。「甲」とはメーカーが商品を出荷する時の最小単位のことであり、荷姿が10×4ということは、この商品は「1甲=10×4=40個入り」ということが分かります。メーカーは商品を工場で生産した際に、運びやすいように商品をある程度まとめて梱包します。そして、この商品の場合は工場生産の時点で10個入りの段ボールを4つまとめてバンドル(PPバンドというプラスチックの固いテープで段ボール同士をしばることです)して1つの商品形態(荷姿)としているわけです。

⑩仕切価格

 メーカーが商品に対して定めている価格のことです。問屋にはこの価格から即引・条件を引いた額で売ることになります。(詳しくは「見積の作り方①」にて)

⑪即引

 問屋の手間賃のことです。商品を問屋の倉庫に入れるということは、そこで商品を運搬したり仕分ける手間が問屋にかかってきます。その手間賃として商品1個に対して仕切価格の〇%を問屋に支払うという取り決めがなされています。仕切価格150円の商品に対して即引8%の場合だと、「150円×8%(0.08)=12円」が即引額となります。この即引きのパーセンテージはメーカー・問屋によって変わります。また、直送の場合は問屋は自社の倉庫を通さずにメーカーが直接スーパーのセンターへ運んでくれるため、手間は減るわけなので即引率は4%などに減ります。
(詳しくは「見積の作り方①」にて)

⑫条件

 商品を問屋の希望価格にするために支払うお金のことです。メーカーは問屋に対して仕切価格でしか販売することができず(細かく言えば、そこから即引を引いた価格ですが)、もちろんそれで売れるのなら問題ないのですが、実際は競合他社もいるためもう少し安くしてくれないかといった交渉があります。そういった時に、条件として別途お金を払うことで、商品1個あたりの納価を下げることができます
 また、この条件というのは、問屋からスーパーに商品が卸された時に初めて発生するものです。メーカーから問屋へ商品を卸す時はあくまで「仕切ー即引額」の価格で売ったことになり、その後その商品がスーパーへ卸された時に「条件」が問屋からメーカーへ請求されます。そのため、見積の作り方①でも触れたように条件というのは後払いになります。(メーカーから問屋へ卸す時と、問屋からスーパーへ卸す時にタイムラグがあるため。)
 そして、同じ商品でも販売先によって条件は変わり、問屋からAというスーパーに売られる時とBというスーパーに売られる時の条件が違うことは多々あります。言い方は悪いですが、メーカーとしてAよりBの方が注力しており、他社に商品差し替えられたくない場合は、Aの見積には条件10円と記入し、Bの見積には条件20円と記入するといった、お金の使いどころを考えます。

⑬(御社)NET

 NETというのはあまり聞き馴染みのない言葉ですが、意味としては「値引きなどを引いた最終的な金額」ということです。つまり、ここにのっている価格が問屋の最終的な購入価格であり、同時にメーカー側の手取金額でもあります。
 この「御社NET」は、「仕切ー即引額ー条件=NET」という計算式で求められます。問屋へは、仕切価格でしか販売できず、そこから手間賃である即引を引き、さらに問屋との商談の中でもう少し安くしてくれとなったら条件を支払うといった流れなので、この式でNET(最終金額)が算出できます。そして、見積書は基本的にエクセルで記入することが多く、このNET部分に計算式が入れ、自動的にNETを算出することが多いです。具体的な計算式としては、「仕切×(1-即引率)ー条件」となります。今回の見積で言えば、仕切価格が150円、即引が8%なので150円×0.08=12円を引いた額、つまり仕切の92%の額、そして条件22.8円を引いた価格である115.2円がNETとなります。(150×(1-0.08)-22.8=115.2円)
※条件やNETが小数になることもあります。
 

 最初はこの式をなかなか理解できないかもしれませんが、見積を書いていく内に分かっていくと思います。
 例)・仕切300円 即引率8% 条件150円
    NET=300×(1-0.08)-150
      =300×0.92-150
      =126

NET…仕切価格から即引や条件を引いた最終的な金額
NET=仕切価格×(1-即引率)-条件
  (「仕切-(仕切×即引率)-条件」も同じ意味なので、こちらでもNETは出せます。)

⑭参考納価

 納価とは、問屋からその先のお客様であるスーパーへ卸す時、売る時の価格のことです。納価とNETの差額が問屋の利益となります。また、ここで注意したいのが「参考」納価となっているという点で、これは、メーカーは問屋に対してこの価格でスーパーに売ってみればどうですかと、参考価格を提示しているに過ぎず、問屋は必ずしもこの価格でスーパーに売るという訳ではありません。問屋はメーカーから商品をNET価格で買った後、あくまでそこからは問屋とスーパーの商売になってくるため、問屋はもっと利益が欲しければ参考納価より高く売り、利益が少なくてもどうしてもそのスーパーに商品を入れたければ参考納価より安く売ります。

⑮御社利益率

 御社利益率とは、問屋の利益率のことです。今回の見積例では、問屋に対しての見積なので御社とはこの見積の受取手である問屋のこと、利益率とは問屋が115.2円でメーカーから仕入れてスーパーに128円で売ると、10%の利益を得られるということです。
この時の計算式としては、
(納価ー問屋NET)÷納価×100=利益率(%)
となります。
見積例を利用すると
(128ー115.2)÷128×100=10%
ということです。
 また、ここで注意したいのが⑭参考納価格でも述べたように、あくまで私たちメーカーが問屋に〇円でスーパーに売るのはどうですかという参考の納価をもとにした利益率になるので、問屋が参考納価と違う価格で卸せば利益率も変わってきます。
 そして、問屋によってこのスーパーに対する商品の利益率は〇%以上は必要などと決まっていることも多いので、過去の見積の利益率を参考にして見積作成することも多いです。

⑯参考売価

 参考売価とは、実際にスーパーの店頭に並んだ時に〇円で売るのはどうですかという提案です。ここもあくまでメーカー側が提示する参考価格に過ぎないため、実際に店頭でいくらで売るのかはスーパー側の判断になります。ただ、問屋はこの参考売価を一つの目安にして納価を決めて、スーパーに商品提案をするので決して無駄な欄ではありません。また、スーパー側は実際この商品はいくらで売るのが妥当なのか、他のスーパーでは何円くらいで売られているか分からないため、実状を把握しているメーカーが売価を提案することが大事です。

⑰企業様利益率

 企業様利益率とは、スーパーの利益率のことです。今回の見積例では、、スーパーが128円で問屋から仕入れて店頭で178円で売ると、28.1%の利益を得られるということです。
この時の計算式としては、
(売価ー納価)÷売価×100=利益率(%)
となります。
見積例を利用すると
(178ー128)÷178×100=28.1%
ということです。
 ここでも注意したいのが、納価・売価ともに問屋・スーパーが決めることなので、実際の利益率がここに記載している通りになるというわけではありません。あくまでこちらが提示した参考価格でやった場合はこうなりますよと、といった提案のようなものです。

⑱標準小売(価格)

 標準小売とは、メーカーが事前に商品に設定してある販売参考小売価格のことです。希望小売価格と言うこともあります。メーカーとしてはこの価格で売ってほしいという設定値ですが、拘束力はなく、実際に見積例からも分かるように参考売価などはそれより低く設定することがほとんどであり、実状はあってないような価格です。

⑲賞味期限

 その商品の賞味期限を記入します。生鮮食品などの場合は消費期限となります。〇ヶ月、〇日など記入形式は問屋・スーパーによって様々です。

⑳備考

 何か記しておきたいことがあればここに記入します。
例を挙げると
・商品のアピールポイント
・数量限定品ならば「〇梱限定」
などがあります。

㉑商品画像

 商品の画像を入れることで、問屋・スーパーも商品のイメージが付きやすくなります。また、得意先によっては商品の画像を別のフォーマットに貼付しないといけないこともあるため、見積に画像を入れておくことで、貼付もしやすくなります。

 

 このように、見積には様々な記入項目があり、営業はこれをもとに商品提案していきます。商品力も大切ですが、価格も非常に重要な要素となります。繰り返しになりますが、上記の見積例はあくまで一例なので、得意先の形式に合わせていく必要がありますが基本的な書き方は変わりません。

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